がんの免疫治療について

当院でのがん免疫治療

【がんの免疫治療について】

院長の実績の項に示すように、院長は15年以上に渡って体の免疫能とがんとの関係や、がんワクチン、がんの免疫療法の可能性について研究を続けています。

がんの免疫療法は、手術・放射線・抗がん剤に続く、第4の治療手段として、また比較的体に優しい副作用の少ない治療として(実際はそうとも限りませんが)、期待されています。

しかし現段階ではがんの免疫治療は標準治療に入るほどの効果はありません。

最近芸能人が標準治療を選ばずに、保険適応外の(すなわち厚生労働省に効果を認めてもらえない)高価で無効な免疫治療に頼り、命を落とす例が目に余ります。

がんと診断された場合は、免疫療法ではなく標準治療である手術・放射線・抗癌剤をまず選ぶべきです。

当院ではがんの免疫療法を行う際は、必ず主治医からの紹介状とCT・MRI・PETなどの画像検査データを必須としておりますが、その理由として、

①標準治療である手術・放射線・抗がん剤が無効だった方のみに、免疫療法を受けていただきたいため
②現段階の正確な病状の評価と、注射部位の決定のため、

が挙げられます。

「がん治療認定医」のいる施設で、標準治療である手術・放射線・抗がん剤の有効性が、この先期待できないと判断された耳鼻咽喉科・頭頸部領域のがん(甲状腺がん・舌がん・喉頭がん・咽頭がん・上顎がんなど)の方のみ、当院で免疫療法の予約を電話で取得して下さい。

【当院でのがん免疫治療】

当院では保険適応外の、厚生労働省が効果を認めていない、高価な免疫治療は行っておりません。

当院で行う免疫治療は、唯一保険診療で耳鼻咽喉科・頭頸部領域で認められている、「OK-432(商品名:ピシバニール)」のみを用います。

これは上気道に激しい炎症を起こす「溶連菌」の凍結乾燥処理菌体と、抗生物質のペニシリンの合剤です。

これを注射することにより、わざとがんの局所に炎症を起こして、様々な免疫細胞を多量に呼び寄せます。

それによってがんに対する免疫応答が賦活され、免疫細胞によるがん細胞の攻撃が起こります。

初回は1KEという単位(薬価:3000円程度、3割負担なら1000円程度)から、1週間毎に徐々に増量していき、5~10KEを週1~2回で維持し、効果がある限り(CR, PR, SD以上=少なくとも大きくならなければ)は、可能な限り継続します。

注射箇所は数カ所に分けて局所注射し、注射部位は当院での超音波検査や、前医でのCT/MRI/PETの結果から決定します。

その際に、以下の方はOK-432による治療を受けることができません

①ペニシリンにアレルギーのある方、ペニシリンショックの既往や家族歴をお持ちの方(蕁麻疹・喘息など)
②溶連菌感染によって重篤な合併症や治療副作用が出た方
③注射可能部位が気道に近く、注射後の腫脹により窒息をきたしやすい症例
④全身状態が悪い例、全身の炎症疾患が重篤な例、ステロイドや免疫抑制剤を中等度以上投与されている例
⑤当日の体調次第でも、免疫治療をご遠慮頂くことがあります。

また同様に、このOK-432局注療法の合併症・副作用は以下の通りです(必ず起こる訳ではありません)。

①薬剤へのアレルギ-反応:発疹・呼吸苦・喘息・低血圧・ショック
②溶連菌感染に似た、心臓障害・急性腎不全・間質性肺炎(致死的)
③発熱:4人に1人程度…当院処方の解熱剤を使用します
④発赤・腫脹・疼痛・倦怠感:15%

【OK-432療法の効果】

OK-432による耳鼻咽喉科・頭頸部領域のがんの治療成績は、手術や放射線・抗がん剤と比べると、決して良くはありません。

有効率をCR, PR, SD以上=がんが少なくとも大きくならないと定義し、それを最終目標としても、有効率は1割以下と標準治療より少ない数値です。

標準治療・一次治療と比べれると、OK-432による免疫療法はかなり有効率が低いです。

そのためこの免疫治療は、標準治療・一次治療が無効な方や、余病のために根治治療が行えない方が対象となります。

またこの免疫療法の合併症・副作用を考慮して、全く治療を行わない(緩和医療として痛みや不快感のみ除去する)道もご提示することがあります。

当院は在宅医療も可能で、緩和医療や終末期医療をサポートすることも可能です(日本緩和医療会緩和ケア講習会修了)。

当院の免疫療法を希望される方は、同時にご自分の最期をどこでどうやって迎えたいか、のご意思を確認させて頂きます。

【がん以外の病気のOK-432治療】

現在耳鼻咽喉科・頭頸部領域でOK-432の使用が保険で承認されている病気は、耳鼻咽喉科・頭頸部領域のがんだけでなく、リンパ管腫が対象となっております。

リンパ管腫とは、生まれつき頬部・顎下部・頸部・頬部に発生する、リンパ液が貯留する巨大な良性腫瘤です。

感染による急激な腫脹の予防と、美容的な側面から治療が進められる疾患ですが、腫瘍が入り組んで狭いところまで入り込んでいることから、手術的な摘出が困難です。

そのためOK-432を用いてわざと局所に炎症を起こさせ、それによる瘢痕化を期待して、内部を癒着させて縮小を図る治療が主流になってきています。

また一部の医療機関では、リンパ管腫だけでなくガマ腫(舌下腺による唾液の貯留)・正中頚嚢胞・耳介血腫などの様々な嚢胞性疾患や器質化して固まりやすい血腫に対し、このOK-432で良好な成績を得ています。

このような良性疾患に対しては、がんに用いるOK-432の量の1/20~1/10の量を注入しますが、1回で改善することは少なく、数回の注入が必要です。

また必ず一時的に腫脹しますので、時に腫瘤が大きくなりすぎて気道を圧迫し、呼吸苦を来たして気管切開術を要する場合(さらには窒息して死に至る可能性)もあります。

当院ではなるべくそういったリスクを減らすための、注入戦略とスケジュールを組みますが、やはりそのようなリスクがあることをご了承頂くと共に、症例によってはOK-432注入療法ではなく手術をお勧めすることもあります。