耳・鼻・のど・首の病気の解説
DISEASE
耳の病気
耳あかは一生取ってはいけません!!!
耳あかの除去、耳そうじは、一生してはいけません。
最近アメリカの厚生労働省が上記のような正式な見解を発表し、yahooニュースのトップに掲載されたのは記憶に新しいことです。
かゆいから耳そうじをすればするほどかゆみは増していき、軟膏塗布や点耳薬は逆効果です。
綿棒などで耳そうじをすればするほど、耳あかを奥に押し込んで、耳栓を作って難聴になります。
耳そうじによるかき壊しで毎日たくさんの患者さんがいらっしゃいますが、結局ご自身で治す(=耳そうじを止めること)でしか、治療方法はありません。
「耳そうじをしないと耳が聞こえなくなる」というのは間違った迷信、都市伝説です。
逆に耳そうじにより耳が聞こえなくなることは、よくあることです。
かき壊しによりバイ菌が耳の穴の皮膚に感染した場合は非常に治りにくく、抗生物質の内服や点耳・軟膏塗布はほぼ無効で、週に3回前後耳洗浄に数ヶ月通って、やっと治る例が少なくありません。
治療には内服の痒み止めや、時に精神安定剤が必要になります。
寝たきりで全く体動がないお年寄りを除けば、耳あかは体動によって自然に外へ排出されます。
特にお元気なお子さんは、例外なく耳垢が排出されます。
学校検診や小児科受診などで耳あかを指摘されることがよくありますが、それは耳あかが悪いものだから除去しなければならないという意味ではなく、耳あかで鼓膜が見えないため、耳鼻咽喉科専門医により耳赤を除去した上で、難聴の原因になるような鼓膜・中耳の病気がないかどうか、きちんと確認した方がいい、という意味なのです。
特にお子さんの耳そうじをするのは非常に危険で、子供さんが刺激で少し動いた場合、あるいはご兄弟姉妹がぶつかってきた場合、その衝撃で鼓膜に穴が空いて一生耳が聞こえなくなったり、耳だれが止まらなくなったりするだけでなく、めまいまで起きて緊急手術が必要になることもあります。
上記の理由から当院では老若男女問わず、極力耳あかを取らない方針です。
もちろん鼓膜やその奥の病変を確認するために、耳あかを除去することはあります。
当院で耳あかを取ってもらえなくても、あなたや大切なご家族の耳を守るためですので、決してご気分を害されないよう、よろしくお願いいたします。
お年寄りの難聴と耳鳴りについて
人間の耳は30歳を過ぎると老化による衰えが始まります。
主に高い音から難聴が始まり、確実に難聴は進行していきます。
同時に聞こえの神経の加齢によるダメージから、耳鳴りも始まっていきます。
老化による難聴と耳鳴りは、確実に進行していきます。
いかなる治療によっても決して改善することはなく、むしろ確実に悪化します。
老人性難聴や耳鳴りに対する薬というものもありますが、効きません。
新聞や雑誌でのいかがわしい広告には、騙されないで下さい。
当院では難聴が進行した後の、補聴器装用による難聴と耳鳴りの軽減をお勧めしております。
めまいの多い原因疾患
めまいと聞くと「メニエール病」が有名で、他科の医師から「めまいだからメニエール病でしょう」と診断された方もたくさんいらっしゃるかもしれません。
しかしメニエール病は極めて稀な病気です。
簡単に診断できる病気ではなく、専門医が診断に数年間を要することもある病気です。
ご自分がめまいを起こした場合、あるいは耳鼻咽喉科専門医以外からメニエール病だと言われた場合、まずメニエール病ではなく、別のめまいである可能性を考えた方がいいでしょう。
以下に患者数の多い(頻度の高い)めまいの原因疾患を解説します。
▼良性発作性頭位めまい症
三半規管の中に耳石という「ゴミ」ができて、頭を動かすと重力に従ってゴミが動いて、それが三半規管を刺激して起こるめまいです。
症状としては、じっと動かないでいるとめまいはしないけれども、頭を動かすと一瞬~数秒間、激しい回転性のめまいが起こります。
この良性発作性頭位めまい症は、全く薬は効きません。
逆にわざと頭を動かしてめまいを誘発して、脳をめまいに慣らしていくのが治療です。
それだけで3日間程度で完治します。
一方、めまいが怖いからと安静にしていたり、そっとゆっくり動くようにしたりしていると、何年薬を飲んでも一生治ることはありません。
特徴的な眼の動きがあるので、耳鼻咽喉科専門医による診断が重要です。
▼椎骨脳底動脈循環不全症
難しい名前ですが、体のバランスを保つ耳・脳幹・小脳を栄養する血管の血流が、一時的に減少して起こるめまいです。
動脈硬化により全身の血管が細めの方に起こりやすく、高血圧・糖尿病・高脂血症などの成人病をお持ちの、比較的高齢者に多いめまいです。
症状としては脱水状態になりやすい夜間~朝に起こる、激しい回転性めまい・ふらつきとして起こります。
しかし回復は早く、1日程度で歩けるようになります。
予防法としては、夜間~早朝の脱水を防ぐために、就寝前にコップ一杯の水分を摂取することです。
それによって夜間にトイレに起きてしまうようであれば、その際にもまたコップ一杯摂取することをお勧めしています。
それによってこのめまいだけでなく、脳梗塞・心筋梗塞のリスクも減らすことができます。
当院では必要な症例では、超音波検査による脳血流の評価を行います。
▼自律神経失調症
漠然としためまい~ふらつき感として現れます。
とくに起立性低血圧による「立ちくらみ」を伴うことが多く、普段の血圧だけでなく血圧の変動を見る検査が必要です。
通常、起立時には脳血流を増やすために血圧は上昇しますが、自律神経失調症の方は逆に血圧が下がり、脳血流が低下します。
この血圧の変化を調整する自律神経は、生活リズム・疲労・精神的ストレス・睡眠不足・風邪などの影響を大きく受けるので、それら生活環境の調整が必要になります。
一方、背景に降圧剤の乱用(血圧の下げすぎ)があることも少なくなく、降圧剤を内服している方は主治医との相談が必要になることもあります。
治療としては、自律神経調整薬・昇圧剤・漢方薬を用います。
鼻の病気
アレルギー性鼻炎の治療
【一般的な治療方針】
スギ花粉症や、ハウスダスト/ダニに対する通年性アレルギー性鼻炎は、病気の範疇というよりは体質のようなものです。
風邪のように薬を飲めば数日で完治する、というものでは決してなく、生まれ持ったご自身の体質であることをよく理解して頂くことが、アレルギーと付き合う第一歩となります。
アレルギーの治療は完全治癒を目指すのではなく、原則アレルギーによる症状を薬剤で緩和することが、治療の基本となります。
▼減感作療法
アレルギーを根本的に治す治療として、減感作療法という治療が以前から行われていました。
これはアレルギーの原因物質となる、スギ花粉やダニの成分を薄めて、少量を週1回皮下注射しながら、徐々に量を増やして、体をアレルギー物質に慣れさせていく治療でした。
最終的にはアレルギーを起こさなくなり、薬から解放される可能性が謳われましたが、しかし週1回注射に通わねばならない患者さんの負担も大きく、あまり広く行われませんでした。
しかし近年舌下免疫療法が可能になり、減感作療法が手軽に続けられるようになりました。
初回は医師の前でショックを起こさないかを確認さえすれば、自宅で毎日舌下液/舌下錠を飲んで、減感作療法を継続することが手軽に可能になりました。
しかし3~5年間内服しても、抗アレルギー薬が手放せるほど症状が改善する方は、1~2割に過ぎません。
しかも舌下液/舌下錠の内服を辞めてしまうと、また数年のうちに元のアレルギーの状態に戻ってしまう現象が多く見られます。
このように舌下免疫療法は、抗アレルギー薬の内服を続けるのに匹敵する、手間と時間がかかることをご承知おきください。
当院ではスギ花粉症に対する鳥居薬品「シダキュア錠」と、ダニに対する通年性アレルギー性鼻炎に対する鳥居薬品「ミティキュア錠」を使用した、舌下免疫療法を行っております。
また他社製品の取扱についてもライセンスを取得しているため、他社製品の当院での継続も可能です。
▼手術治療
一方でアレルギー性鼻炎が、他のアレルギー性疾患、例えば気管支喘息やアトピー性皮膚炎と決定的に違う点は、手術的な治療が可能である点です。
「下鼻甲介焼灼術」はアレルギーを起こしている鼻内の粘膜を、麻酔をした後、薬や電気メス、レーザーで焼く治療です。
「やけど」を起こしますので、一時的に数日間鼻づまりは悪化しますが、その後古い粘膜は脱落し、アレルギーに感化されていない新しい粘膜に置き換わります。
しかしアレルギーは体質なので、いつかはその新しい粘膜もアレルギーを再び起こしていきます。
再度鼻粘膜がアレルギーを起こすまでの間は、薬の内服から解放されます。
その期間は人によってまちまちで、院長の経験では1ヶ月~5年、多くの方は2~3年程度です。
当院でも薬剤を用いた「下鼻甲介焼灼術」を行っておりますので、ご相談下さい。
健康保険が適応され、3割負担の方で3000円程度です。
のどの病気
風邪に抗生物質を処方する?
風邪はウイルスによるものですので、抗生物質は効きません。
そのため主に内科系の医師の多くは、風邪と診断した場合には抗生物質を処方しませんが、耳鼻咽喉科の医師は処方することが多い傾向にあります。
理由は単純で、他院で抗生物質を処方されなかったため、重症化した患者さんが耳鼻咽喉科を受診することが多いからです。
確かに風邪はウイルスによるものですが、風邪により体力が落ちた状態に細菌(抗生物質が有効)が感染する(二次感染)ことが非常によくあります。
それを予防するために、「ちょっとのどが痛い」程度の風邪でも抗生物質を処方します。
入院や緊急手術が必要になる重症の患者さんを診る度に、最初に近所のお医者さんにかかった時点で抗生物質が処方されていれば…と痛感します。
イギリスで約1万2千人を対象とした研究では、風邪に抗菌薬を処方した方が、明らかに重症化を予防できたという報告があります(Little, P, et al., Lancet Infect Dis, 2014)。
そういう訳で、当院では風邪の方にも抗生物質を処方します。
もちろん強い抗生物質は最初から処方することはありません。
高齢者の飲み込みの障害
健康な方でも60歳を過ぎてくると、飲み込みの機能が落ちてきます。
解剖学的に男性の方が悪化しやすくなっています。
最初は水分がむせ込みやすい、あるいは食べ物がのどに引っかかりやすい、という症状から始まります。
現在日本人の死因は第1位ががん、第2位が心臓疾患、第3位が肺炎となっています。
肺炎の多くは「誤嚥(ごえん)性肺炎」という、加齢や脳卒中などによってのどの力が弱くなり、食物や唾液が食道でなく気道に入ってしまって、肺炎を起こして死に至るものです。
食物や唾液が気道に入ってしまう(誤嚥)と、通常は「むせ」が起きて排出しようとします。
「むせ」自体は生存に必要な防御メカニズムなので、それほど心配はいりません。
むしろ「むせない」で肺炎になる方が、はるかに恐ろしいのです。
誤嚥やむせ、のどの引っかかりを防ぐには、のどの筋肉を鍛えるリハビリが有効です。
最近大ベストセラーになっている、「肺炎がいやなら、のどを鍛えなさい」(西山耕一郎著)や「おでこ体操」を参考にして下さい。
当院では内視鏡を用いた飲み込みの機能検査や、往診用の内視鏡システムを揃えており、クリニックだけでなく往診や、病院施設・老健施設・老人ホームへの往診や飲み込みの機能評価やアドバイスが可能です。
首の病気
首の腫れ・できものは耳鼻科へ!!
首には様々な腫れ・できものができます。
その中でも一番多いのが、リンパ腺の腫れです。
首にはリンパ腺が数十個あり、首から上に起きた炎症やがんが全身に飛ばないように、食い止める働きをしています。
首のリンパ腺が腫れる原因で圧倒的に多いのは風邪と虫歯ですが、それに次ぐ原因は「がんの転移」と、リンパ腺自体のがんである「悪性リンパ腫」といった、生命にかかわる重大な病気です。
がんの転移の場合、その原発巣の多くは耳鼻咽喉科領域であり、内視鏡や超音波検査、穿刺吸引細胞診などによる詳細な検査が必要です(PET検査は大きさ1cm以上でないと検出できません)。
また悪性リンパ腫は穿刺吸引細胞診での診断は困難で、リンパ腺の摘出・切除による診断が必要になります。
いずれにしろ頭頸部の詳細な解剖に熟知した耳鼻咽喉科医の診断が不可欠で、他科の医師による手術による神経麻痺やできもののバラマキのリスクは防がねばなりません。
またのど仏の下の前頸部の腫れは、甲状腺の病気の可能性があります。
甲状腺が全体的に腫れていれば、バセドウ病や橋本病などのホルモン異常を伴う病気の可能性があります。
甲状腺の一部にできものができることは非常に多く、子供や若い方でもがんができることも珍しくありません。
院長は日本甲状腺学会認定の「甲状腺専門医」です。
当院では超音波検査や穿刺吸引細胞診、検体の染色システム、甲状腺ホルモン値が数分で調べられる設備を整えております。
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